女神か
投稿日:2024/01/05
華やかにして淑やか、華奢にして清雅、猥褻とも淫靡ともほど遠い、理想、空想、幻想の世界に呼吸する花の如き乙女。瞳は冴え、眉は凛々しく、雪恥ずかしい頬、薔薇色の唇、笑みとともに現れる綺麗な歯列、前髪と鬢の毛の流れが薄墨を刷いて好もしい瓜実顔の輪郭を飾って、婉然たる身体つきを軽やかに包み込んだ白衣、白タイツとあっては見るもトキメク高嶺の白昼夢、まるで雲、まるでせせらぎ、まるで祝福の旋律かと疑われる肉感のなさ。
しかし天晴れ、彼女は衣を解き下着を取り払い、ついには吾人と同じく、この世に生を享け、同じ肉、同じ血潮を具えることを自ら証明するに至るのだ。その丸々した乳房、珊瑚の玉のような妖艶な乳首、ほっそりした腰、肉の薄い鼠蹊部、密度の程よい小判形の愛らしい禁忌のようなあの茂みをシーツの上に曝け出しては、右手首の腕時計をむなしい護身符のように身につけたまま、その肌、その粘膜を撫でられてはにかみ、舐められて悶え、嵌め込まれては喘ぎも高く、四肢を力ませ、ぴたぴた股ぐらを鳴らしながら目に涙さえ滲ませるさまには言葉もない、その息づかい、そのぬめり、その立ち昇る分泌物の匂いはさだめし相手の男に、女神を一人の人間の女に化せしめる至純の男性的快楽を存分に味わわせて余りあったであろう。
ただ一つ、全編通じて主観アングルのないのが遺憾だが、それゆえにかえって、刑法175条により巧妙に守られたあの聖域をただ一人占有し征服し果せたかの男の満足はひとしおであったものと思われる